敦賀の金ヶ崎宮: 福井

恋のパワースポットに転じた悲運の激戦地

Takako Sakamoto   によって

福井県敦賀市にある金ヶ崎宮は、一風変わった神社だ。なぜか? それはこの神社の歴史と、現在人々が知る金ヶ崎宮との間に天地ほどの開きがあるからだ。そもそもこの神社は1337年、足利軍と新田軍の間に繰り広げられた金ヶ崎城の戦いで、自決に追い込まれた尊良親王 ( たかながしんのう ) を主祭神とし、1890年に創設された宮だ。それが不思議なことに今では恋のパワースポットとして名高いというではないか?!

神社の背景
金ヶ崎宮は、金ヶ崎城址の入口付近に建っている。遠く遡る事1336年、この地で南北朝軍が激しい戦闘を繰り広げた。そもそも南北朝時代以前、日本にはただ一つしか朝廷はなかった。この2つの朝廷が存在するという異例な南北朝時代 ( 1334~1392年 ) は、足利尊氏の朝廷に対する反乱に端を発している。

簡単に説明するとこうだ。鎌倉時代、2人の有力な武士がいた。新田義貞と足利尊氏だ。この源氏の大将二人が後醍醐天皇を助け、1333年に鎌倉幕府を転覆した。しかし後醍醐天皇の建武の新政が始まるや、足利尊氏は天皇の目指す政権が、朝廷や公家が武家を支配した平安時代の再現にあると気付く。武家達の轟々たる抗議・非難の声を看過できず、尊氏は主である後醍醐天皇に刃向い、自らが率いる武家政権を確立しようと決心する ( 後の北朝、室町幕府 )。尊氏のかつての同僚、源氏のもう一人の大将新田義貞は、後醍醐天皇に忠実であり続ける ( 後の南朝 )。かくしてかつて共に鎌倉幕府を転覆した二人の同僚達 ( 尊氏と義貞 ) は袂を分かち、敵同士として戦うこととなった。

1337年、新田軍 ( 南朝方 ) が立て籠もる金ヶ崎城を足利軍 ( 北朝方 ) が猛攻する。最終的に城は陥落し、義貞は現在の福井県南越前町にある杣山城へと敗走、自軍の立て直しを図る。落城した金ヶ崎城に残った尊良親王 ( 後醍醐天皇の長男 ) と新田義顕 ( 新田義貞の長男 ) は共に自害する。

金ヶ崎宮の歴史
1890年、敦賀の人々の絶大なる請願により、金ヶ崎城の戦いで自害を余儀なくされた尊良親王 ( たかながしんのう: 後醍醐天皇の第一皇子 ) と、後に足利軍に捉えられ毒殺されたと伝えられる恒良親王 ( つねながしんのう: 後醍醐天皇の皇子 ) を祀る金ヶ崎宮が建立された。因みに新田軍の頭領、新田義貞を主祭神とする神社は、彼の終焉の地、福井市内にある ( 藤島神社 )。

現在の金ヶ崎宮: 恋のパワースポット「恋の宮」
1907年頃、金ヶ崎宮では「花換えまつり」が行われるようになった。当時の社会では、好きな人に愛を告げる機会などなかったが、このお祭りの時だけは「花換えましょう」と互いに呼びかけ合い、好きな相手に桜の小枝を渡すことで愛を告げることができた。現代版「婚活フェスティバル」だ。この「花換えまつり」は今日まで続き ( 毎年春開催 )、現在の金ヶ崎宮は恋のパワースポット「恋の宮」として知られ、人気を博している。

かつての悲劇の地が今や恋のパワースポット、とは俄かに信じがたい転身だが、どんな理由にせよ多くの人々がこの地を訪れるのは良い事ではないか・・・参拝者の中には神社の歴史を学び、激戦地で武運つたなく命を落とした皇子達や武者達に思いを馳せ、追悼の祈りを捧げてくれる人もいるかもしれない!

福井の新田義貞シリーズ
1. 敦賀の気比神宮: 福井
2. 華麗なる気比神宮: 敦賀
3. 敦賀の金前寺: 福井
4. 松尾芭蕉と敦賀の金前寺
5. 敦賀の金ヶ崎宮: 福井
6. 激動の金ヶ崎城跡
7. 福井の藤島神社
8. 美しき藤島神社

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Takako Sakamoto

Takako Sakamoto @takako.sakamoto

I was born in and grew up in Tokushima prefecture, and have lived in many places since then: Nishinomiya, Kyoto, Nara, Mie, Tokyo, Kanagawa, Saitama, Chiba, Fukuoka and Fukui. I am currently living in Yokohama City. All the places I lived, all the places I visited, I have loved dearly. The historical places where people lived, loved, suffered, and fought - places where I can still hear their heartbeats - mesmerize me. I'd like to retrace the footsteps of the people who lived in Japan a long long time ago, and introduce to you what they left behind on this soil.  

Takako Sakamoto

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