マダムツカモトがシェフとして采配をふるうレストラン「ベッキエッタ」は、福井市の足羽川のほとり、福井競輪場の近くにある。
看板というよりは表札と言った方がいいだろう。
小さなそれが玄関の脇にさりげなくかかっているだけである。
外観はまったくの普通の民家だから、車で走りながら探しても絶対に見過ごしてしまうようなさりげなさだ。
しかし、玄関をくぐって部屋に案内されると、そこは居心地の良い和風のアジアンテイスト。
ツカモトさんに言わせれば、改装にかけるお金がなかったからとか。
一階は長いテーブルが、ベンチシートとスツールに挟まれてある。
二階は畳の間に丸い卓袱(ちゃぶ)台が3つの席。
白熱球の電灯がぼうっと室内を照らし、静かにジャズが流れている。
全席で20人も入ったら満杯状態だ。
それだけのお客さんをさばくのに手一杯なので、彼女は店を広げる気はさらさらないらしい。
お母さんと二人で切り盛りしている。
お母さんは、きさくな方でホール担当。
娘のツカモトさんはシェフとして厨房に立つ。
お母さんは敬愛と、親としての厳しさをたたえた目でいつも愛娘の姿を傍らで見つめ支えている。
ワインリストにはイタリアを中心に2000円~10000円くらいの赤白スパークリングなど10数種類が、セラーに丁寧に保管されている。
ビールはキリンラガーのみ。ワインを飲んで欲しいのだろう。
さて、料理だ。
ツカモトさんは東京は「フェルミエ」の元社員だった。
「フェルミエ」といえば、チーズに関わったことのある人なら知らない人はいないほどの、チーズインポーターの草分けである。
東京・虎ノ門は愛宕坂にあるこのチーズ輸入会社「フェルミエ」で彼女は長くチーズビジネスに関わり、チーズへの造詣を深めていった。
そのチーズへの深い知識と情熱を料理に思う存分ハーモナイズさせたのが彼女の店「ベッキエッタ」なのだ。
とにかく勉強熱心な彼女である。
年に幾度となく店を閉めてイタリアにチーズと料理を見極めに出かけていく。
そしてフルチャージして帰国した彼女はさらなる絶品をメニューに加えてくる。
フランスではチーズはそのまま食べるが、イタリアでは基本的にチーズを料理に使う。
だからイタリアにはチーズの家庭料理のレシピがたくさんある。
イタリアは地域毎に気候や植生が変わり、その植生も季節によって変化する。
それを食む牛やヤギが出すミルクの性質が、それらのさまざまな条件のもとでさらに違ってくるのである。
これにチーズの作り手の手法やこだわりが加わるから、北部のピエモンテから南のシチリアまで、実に多種多様なチーズが生産されているのだ。
これらの個性的なチーズがその地で採れる野菜や魚介類とともに調理されるや絶品のチーズ料理が生み出される、というわけである。
私としては、ツカモトさんの進化ぶりを季節ごとに確認できることが最大の喜びである。
こんな店がもし東京などの都市部にあったらまず予約がおそらく取れないだろう。
もちろん福井でも大人気で、週末などいきなり行っても席は無い。
遅くとも1週間前には予約の電話を入れたい。
チーズ料理の、まさに福井の名店である。
小さなお店は経済的な理由も含めて大掛かりな宣伝をしていませんよね。だから口コミで静かに広まっていきます。「ベッキエッタ」の厨房はとても狭く、塚本さん独りで仕切っているので、いきなり大挙して客が来てもかえって不満足になってしまう、というところから、彼女が采配できる範囲でしか予約をとっていません。こういうところ、偉いなあと思います。
同じ福井ですので、いずれ直接(Larryさんを通じてとかで)ご挨拶差し上げることもあるかもしれませんね。どうぞよろしくお願いします。
鯖江生まれですがこんなお店があるとは素敵な情報いただきました!私は敦賀、零南の記事を中心にかいていこうと思っています!よろしくお願いします☆彡