京都 「京極スタンド」

地元の常連たちに愛され続ける居酒屋

 京都洛中の一大繁華街、京極。その中央を南北に新京極通りは貫いている。東西に走る錦小路通の交差点にある錦天満宮を少し過ぎた辺りにあるのが、居酒屋「京極スタンド」だ。

 昭和2年の創業で、昭和の雰囲気が色濃く残るノスタルジア満杯の居酒屋である。

近頃、ネットで昭和の看板やポスターなどを集めて来て店内にディスプレーする昭和懐古趣味の店が全国にあまたあり、いかにもあざとい雰囲気作りに終わっている例が少なくないのだが、ここ「京極スタンド」にそんな小手先は不要だ。昭和の長い歴史の垢が必然的に良い具合に店に沁み込んで、それが実にシックな柔らかい光となっている。

 少しもきどらない。京都ならではの食の昇華などという気負いもない。大衆メニューに徹して気さくな心地よさを1世紀近くも提供し続けてきた老舗居酒屋ならではの構えである。こういう店を大事にする地元民の心意気が左党の私には堪らなく嬉しい。

 夕方の店内は、仕事を終えた地元のご常連たちのにぎやかな話し声や笑い声が店員の声と混ざりあい、まさに京都の宵祭の最中に飛び込んだ風情である。地元民の客たちの京都弁が耳に心地よい。ガイドブックに名を連ねる店なら観光客が料理が出るたびにスマホでパチリと撮影する光景が日常的だが、この京極スタンドには見渡す限りそんな客は一人もいない。

 大人数で行くなら空いていれば4人掛けのテーブルに案内されるが、2人ならほぼ確実に長い大テーブルに通される。当然他の客とは相席だ。

しかしそれがまた楽しい。酔いも手伝って気持ちがほぐれているからふとした機会に隣の人と交わす気さくな会話がさらに居心地を良くしてくれる。

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