JR京都駅から徒歩で洛東を目指す。
鴨川に架かる七条大橋を渡るとまもなく右手に見えてくるのが蓮華王院である。
三十三間堂と呼んだ方がわかりやすいかもしれない。
平安時代、後白河天皇が平清盛から資金協力を得て建立した名刹である。
当時は五重塔など幾つもの伽藍が建ち並ぶ隆盛を誇る広大な寺であった。
それらの伽藍は戦火などで焼失。こんにちまでその生命を永らえた唯一の建物が本堂である。
内部には千手観音坐像を中心に、その左右両脇の仏壇を千体の千手観音立像が囲む。
そしてその最前列には国宝二十八部衆の見事な木像が横一列に並んでいる。
惜しむらくは本堂は写真撮影が厳しく禁じられていることだ。
毎年正月明けの睦月中旬、この三十三間堂では通し矢の行事が奉納される。
この通し矢は、本堂の南縁側を舞台に開催された。
江戸時代には藩と我が所属する道場の名誉をかけて藩召し抱えの弓の名手たちがその腕を競い合ったものだ。
千手観音像が並ぶ本堂内部の静謐さと通し矢とは言え戦の具である弓矢の音の轟きとの対比がいかにも京都らしいではないか。
千年の首都であった京都の町に必然的に染み付いた歴史の血生臭ささ。
それも長い時間の流れに洗われた三十三間堂は、今では凛と張り詰める空気が清々しい。