「サルヴァトーレ・クオモ」。
正式には「ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモ&キッチン」という。
京都・河原町三条の高瀬川に沿って全面ガラス張りの窓というデザインである。
川の流れと川沿いに茂る桜並木。
春夏は緑、秋は紅葉。冬は雪。
ビューレストランとでも言おうか。
春ならば、川を臨むテラス席は夜桜におおわれてうっとりの宵を過ごせる。
川沿いのオープンテラス席も希望すれば座れる。
私は室内の席だったが、川沿いの壁が全面ガラス窓だから外の眺めは存分に楽しめる。
夕日に染め抜かれた茜色の雲が徐々に色あせて薄暮へと泥んでいく様を肴に、冷たいビールは格別の美味だ。
サルヴァトーレ・クオモ氏は1972年生まれの四十一歳。ナポリピッツァを日本に広めた功労者として名高いイタリアングランシェフである。
この店、値段も手ごろ、しかもイタリア料理店であるにもかからわず、なんと炭火焼の焼き鳥が定番メニューにあるとあって外国人客がすごく多い。
こういうメニュー構成もワールドワイドな感覚を持つクオモ氏のセンスなのだろうか。
来店前にあらかじめインターネット(ホームページ)でSalvatore Cuomo Wine Clubの会員になっておき、クーポンがあったらそれを見せるとサービスがついてくる。
テーブルワインではあったが、心憎い気遣いが嬉しい。
料理の味はもちろんとても大事だが、良いレストランにはお客を喜ばせ楽しませる仕掛けがいろいろある。
イベントがときどきあって、ワインが半額、30%オフなどで飲めるディスカウントの当たりくじが客席に回ってきたりするのである。
客を楽しませ、売上もしっかりねらっている。
ポリシーに走り過ぎず、お金儲けに走り過ぎず、中庸をいかにして行くか。どの業態にも言えることだが、これが簡単なようで結構難しいものだ。
さりげなくこだわる。
これはすごくお客をいい気持ちにさせる。
料金に反映されていない、その店のきらりと光る価値である。
こういう店を見ていると、その難しさと楽しさがよく分かる。こういう気遣いのある店は流行るに決まっているのだ。
京都に来たら「和久傳(わくでん)」のような本格京料理は素晴らしい選択だが、その日の京都ぶらぶらをしゃべりながらのくつろいだイタリアンも、なかなかしゃれている。
そういう意味でこの「クオモ」はとても満足できる素敵な店である。