秀吉と豊国神社: 京都

269年の時を経て、明治天皇により再興された神社

Takako Sakamoto   によって

京都東山に、豊臣秀吉を祀る神社がある。豊国神社だ。御承知の通り豊臣秀吉は、一介の農夫から天下人まで登り詰めた戦国時代の武将だ。聡明で野心に満ちた彼は織田信長に仕え、信長の死後 (信長は1582年、本能寺で暗殺される)、並み居る信長の臣下群を平らげ、1590年に天下を取る。

背景 (1599)
豊国神社は秀吉の死の1年後、1599年に秀吉を神として祀り建立された。秀吉はこの地で神となり (豊国大明神) 崇められた。京、大阪における生前の秀吉の人気は大したものであった。なぜなら彼の在世中経済は潤い (後半朝鮮の役で疲弊したが)、また彼は朝廷や公卿を手厚く保護したからだ。何より彼の出世物語 (一介の農夫から天下人にまでのし上がった) そのものが民に希望を与えたに違いなく、人々が彼を英雄扱いし神格化したとしても何ら不思議ではない。

徳川が豊臣家を滅ぼした時、神社はどうなった? (1615)
秀吉の死後豊臣家をせん滅し、天下人となった徳川家康は、もちろん秀吉が民に崇められるのを嫌った。家康は江戸 (現在の東京) に徳川幕府を開き、秀吉とは打って変わって朝廷が再び力を付けぬよう、京の公卿や朝廷を厳しい掟で縛った。産声をあげたばかりの彼の政権にとって、関西地方に秀吉を神と崇める民衆がいるのは都合が悪い。そこで家康は豊国神社を取り壊そうとしたものの秀吉の正室ねねの懇願により、社殿は残した。しかし神社は廃絶、その立ち入りを禁じる。そのためこの神社は269年もの長きにわたり、江戸時代を通じて苔やシダに覆われたまま打ち捨てられた。

明治政府が徳川幕府を打倒した時、神社はどうなった? (1868)
1868年、徳川幕府が消滅し明治時代が始まる。明治維新 (1868) は、ある意味徳川 (東軍) と薩摩/長州 (西軍) が戦った1600年の関ヶ原の合戦の復讐劇だったとも言える。勝敗はひっくり返り、今回は西軍が東軍を打ち破った。興味深いことに徳川が政権を失うや否や、明治天皇は豊国神社を再興するよう命じる・・・この秀吉を神と祀る神社の栄枯盛衰を考えた時、ふと新たな疑問が生じた。「ならば徳川が敗北し西軍!? が再び政権を握った今、家康を神と祀る日光東照宮は一体どうなったのか?」と。

徳川が敗北した時、家康を祀った神社 (日光東照宮) はどうなった? (1868)
調べてみたところ、私の勘に狂いはなかった。明治政府は案の定、日光東照宮を潰そうとしたのだ! まず、戊辰戦争 (1868年、徳川方と明治政府側で戦われた) の最中、東照宮は危うく焼失を免れた。次に明治政府高官の一部が東照宮廃絶を訴えたが、これも免れた。しかし当然明治新政府の庇護を得ることなく、神社は廃れていく。1880年、最後まで新政府側と戦った元会津藩藩主、松平容保が東照宮の宮司に就任する。彼は何とか東照宮を再興しようと互助会組織を結成し、寄付を募るなどして神社の維持保全に努めた。あっぱれな忠誠心だ。にしても日光東照宮は世界遺産にも登録されるほどの美しい神社だ、よくぞ潰されず今日まで残ってくれたものだと思う。一般市民の立場から言わせてもらえば、政権がAからBに移動するたび、前政権の名残を全て破壊するなど、滑稽以外の何物でもない・・・と思わないだろうか?!

話を元に戻す。復興した豊国神社は、今でも関西の人々が開運や金運を願いにやって来る人気スポットだ。秀吉の出世運や幸運に何とかあやかりたい、というわけだろう。この神社のすぐ横には方広寺が建っている。この寺にはかの有名な「運命の鐘」、家康が豊臣家せん滅の口実に使い、大阪城を攻撃する遠因となった鐘が残っている。豊国神社に来たなら、忘れずにこの鐘もチェックしてみよう! 豊国神社の他の写真はここに掲載しているので合わせてご覧頂きたい。

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Takako Sakamoto

Takako Sakamoto @takako.sakamoto

I was born in and grew up in Tokushima prefecture, and have lived in many places since then: Nishinomiya, Kyoto, Nara, Mie, Tokyo, Kanagawa, Saitama, Chiba, Fukuoka and Fukui. I am currently living in Yokohama City. All the places I lived, all the places I visited, I have loved dearly. The historical places where people lived, loved, suffered, and fought - places where I can still hear their heartbeats - mesmerize me. I'd like to retrace the footsteps of the people who lived in Japan a long long time ago, and introduce to you what they left behind on this soil.  

Takako Sakamoto

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