岩手県 種山ヶ原

「風の又三郎」に出会える高原

東京から東北自動車道を北上し450km、水沢ICより国道397号を東へ30km。国道から数分、細い山道を車で登っていくと、突如として目の前に広大な草原が現れる。ここ種山ヶ原は、その自然に魅了された宮沢賢治が小説「風の又三郎」の舞台としたところ。岩手県奥州市・住田町・遠野市にまたがる標高800mほどの高原地帯である。

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
(宮沢賢治「風の又三郎」より)

6月初旬、梅雨入り前に訪れた高原は人影もまばらで、空がどこまでも高い。
どどう、と風が吹くと、一面のたんぽぽの綿毛がふわふわと宙に舞う。
ここなら風に乗って突然「又三郎」が現れても不思議ではない。

種山ヶ原は、宮沢賢治ゆかりの「イーハトーブの風景地 」の一つとして2006年に国の名勝に指定された。 イーハトーブとは、賢治の心象世界から生まれた架空の地である。そこでは美しい自然が人々を育みながらも、時として厳しい牙を剥く。別れや死とも無縁ではない。にもかかわらず、イーハトーブが理想郷とされているのは、そこに「絶望」の二文字がないからだ。
2011年、東日本大震災を経験した日本では、そんな賢治の世界観が再び注目されている。

ウォーキング、バードウォッチング、キャンプなど、充実したアウトドアライフが楽しめる種山ヶ原。夜には銀河鉄道が走りぬけるような満天の星空が広がる。賢治の作品集を片手に、人々を惹きつけてやまないイーハトーブを体感してみてはいかがだろう。

■周辺施設

※種山ヶ原へのアクセスは公共交通機関なし、自動車のみ

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