米から作る日本酒は、格式ばった集まりやお祭りのときには欠かせないものです。
埼玉県は荒川・利根川の豊かな伏流水にめぐまれ、関東では最も酒造りが盛んで、全県で35か所の蔵元(酒蔵)があります。なかでも、甲武信岳に源流をもつ荒川は中流域で入間川と合流し東京湾にそそぐ、酒造りに欠かせない豊かな水資源です。とくに荒川と入間川の合流域は最大部分が2.5kmにもなり、日本一の川幅となっています。埼玉以外の酒どころとしては兵庫県の灘、京都府の伏見、米どころの新潟が有名です。
この四月に城址公園の桜で有名なさいたま市・岩槻に行きました。その際当地の老舗酒蔵である鈴木酒造に行き新酒を購入し、併設の酒作りに関連した酒蔵民具館も見学しました。新酒作りはその年の新米を使い、12月頃から翌年の3月頃の作業なので、既に酒造りが終了していたのか、当日は酒蔵が静まり返っていました。ただ酒蔵民具館と工場直営の売店は開いています。
新酒を発売する時期の目印は酒蔵の入り口に杉玉がつるされることでわかります。むかしから、杉玉は新酒販売の季節に愛飲家に『美味しいお酒が出来ましたよ』と知らせる縁起物ですが、最近は1年中飾ってある事が多いです。
私は吟醸酒を1本(720ml)購入しました。吟醸酒とは、精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水を原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢、穏やかな香りがあります。同時に購入した酒粕は酒造りの過程でできる白色の固形物で、甘酒や粕汁、粕漬けなどの日本料理には欠かせない食品です。
2階にある常設の酒蔵民具館には、1871年に設立された当時に使われた酒造りに欠かせない杉樽、保存のための陶器製の甕(カメ)、お酒を供する徳利、お椀、胡麻等をつぶすすり鉢等の古民具が展示されていました。その他、オーナーのコレクションとして人形、浮世絵もありました。また岩槻は江戸時代から人形作りが盛んであり、沢山の人形屋とともに『人形の東玉・人形の博物館』、『お人形歴史館 東久』、『鈴木人形』などの人形制作を見学できる展示施設もあります。