瓦と樹でできた門はわび・さびの漂う佇まい。接待や祝い事での利用が多いことも頷ける。暖簾をくぐり敷石の上を行くと、豊かな緑に迎えられる。春には枝垂れ桜、初夏には蛍に彩られる瑞々しい庭。辺りの水がきれいなので、と女将は微笑む。
その地元小室の水と、川越産の米で作る「武州川越 田面の雁」は、いも膳限定の地酒。女性に人気の「いも膳カクテル」もオリジナルだ。「いも膳カクテル」は『いも懐石』の食前酒としても提供される。
「さつまいもの女王」と呼ばれる「紅赤芋」を生かした『いも懐石』は、川越名物のさつまいもに特化した通好みの懐石だ。中でも「源平焼き」は、牡蠣や海老にさつまいものソースをかけ香ばしく焼きあげた逸品で、ファンからの評価も高い。凝縮された旨みと海の幸からにじみ出る塩気、いもの自然な甘みが絶妙に絡み合う。
さつまいもの粉を使用した「いもめん」や「ヒカド」は男性の支持が高い。「ヒカド」はポルトガル語で「細かく刻む」の意。刻んだ野菜や鮪などの具に、すりおろしたいもでとろみをつけてある。おだしのきいた奥行きのある味わいが、心身を満たしていく。また、デザートの「いもあいす」もファンが多い。さつまいもを丁寧に裏ごしするため、まろやかで濃厚な甘味と香りが口いっぱいに広がる。
さつまいもに限らず日本中の味覚を楽しみたい方には『今日(こんにち)懐石』もおすすめだ。店長と女将が日本中の産地や市場を巡り、選りすぐった食材の饗宴を堪能しよう。大間の鮪など、厳選した食材を取り寄せている。「おもてなし」の心の行き届いた器や盛り付けも、味わい深い。
特別席「冬扇」(とうせん)を含め、個室は2名から50名まで。10名以上の予約では無料送迎バスを利用が可能だ。旬の料理と、季節ごとに表情を変える庭。何度利用しても、新たな一面と出合える。川越観光やゲストを迎える際には、押さえておきたいスポットだ。